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台湾死亡遊戯 -其の弐-

大分から東京への飛行機を予約する時は、決まって一番前の席を予約して帰ることにしていました。(Jet StarはLCCなので、一番前の席まで全てエコノミー席です。

これは、スチュワーデスと向かい合って座りたいからなどという理由からではなく、単純に一番最初に出られるからという理由と、前の席を気にせず足を伸ばせるからという理由でそうしていました

むしろ、少し綺麗なスチュワーデスが居る時などは目のやり場に困るばかりか心の平穏まで乱されてしまうので、こちらからするといい迷惑なのです。

例えば、電車やバスといった公共の場でエロ本を読んでいて楽しいでしょうか?周りから白い目で見られるだけで、ただの修行、もしくはそういうプレイにしかならないでしょう。誤解を恐れずに言えば、スカートの短い綺麗なスチュワーデスに目の前に2時間座られるという事は、目の前にエロ本を置かれて、歯を食いしばりながら2時間それを無視し続けるという苦行と全くイコールなのです。少なくとも、コンプライアンスの相当低い私の様な人間にとってはそうなのです

渋谷に着くと、私はガールズバーの隣にある居酒屋「鳥竹」に入り、この後ろみちゃんとどんな話をしようか、どんなウィットに富んだギャグをかましてやろうか、そんな事を考えながら、焼き鳥と煮こごりをつまみにビールを飲んでいました。

1時間ほど飲んだところで会計を済まし、隣のガールズバーへ入店しました。その時私は既に常連と化していたので、店長は私の顔を見ると自動的にろみちゃんを付けてくれるようになっていました。

その日もいつものように精子臭い話を延々とろみちゃんに浴びせ続けて、気付けば始発が動き出す時間となりました。そろそろ帰ろうかとお会計を頼むと、ろみちゃんは思い出したかのように、「再来月から大学を休学して台湾へ留学する」と私に告げました。

突然の事で完全に気が動転していた私でしたが、とにかくショックを受けている事を彼女に悟られたくない一心で何かを言わなければならないと思い、「じゃあ俺も台湾遊び行くよ」と咄嗟に答えていました。

すると彼女は、向こうに友達も居ないので是非遊びに来て欲しいと言いました。私はショックを受けてはいましたが、既に10月に有給を取る事を決意していました。

翌週。私は鳥竹で、つい先ほど購入した「地球の歩き方〜台北〜」を熟読していました。この後すぐ、ろみちゃんと台湾での「デートプラン」を話し合うという激アツイベントを控えている私は、はやる気持ちを抑えきれずにドッグイヤーを連発していました。

地球の歩き方を読み終え、台北マスターとなった私は意気揚々とお店に入りました。席に着くなり、ろみちゃんは「ちょっと待って」と言ってカウンターの裏へ消えたかと思うと、はにかみながら「地球の歩き方〜台湾〜」を手に戻って来ました。お気付きの通り、彼女が「台湾編」で私が「台北編」です。彼女が既に「台湾編」を持っている事を知っていた私は、彼女の滞在先であり私の訪問先である「台北」という都市について二人でもっと深く掘り下げてみたい、そんな思いから「台北編」を持参していたのです。

今になって思えば、自分の留学先の旅行ガイドをドッグイヤーだらけにして持ってくる人間など、薄気味悪いメンヘラ以外の何者でも無いのですが、恋は盲目。気分が高揚していたその時の私には、台湾の夜市を二人で歩いている姿以外何も見えなかったのでしょう

その日は「台湾編」と「台北編」を付き合わせながら朝まで台湾での「デートプラン」を話し合い、帰り際にろみちゃんから、おそらくお店で会えるのはこれが最後になるであろう事を告げられました。

翌月。私は既に来月の連休につなげて有給を取得し、航空券の予約も済ませていましたが、いざこの旅行が現実のものとして間近に迫ってくると、不安で居ても立っても居られなくなってきました。そもそも、「ガールズバーの女の子に会いに会社を休んで台湾に行く」という行為自体がDQNのやる事であるし、更に、いつもはお酒の力を借りて話を出来ていたものが、旅行先では少なくとも日中はシラフで乗り切らねばならないというハンディを背負う事に、私は気付き始めていました。

「1対1では何もさせてもらえないだろう」

そう直感した私は、すぐに友達に連絡して事情を説明すると「ホテル代を払うなら付いて行ってやっても良い」という返事をもらいました。私はそれを快諾し、かくして「カラコさん」に東京から台湾までやって来てもらう事になりました。

 

【カラコさん】

ヒートテックを下着としてではなくロンTとして着こなす事が出来る数少ない人物。シャツを着る時は襟元付近だけボタンをしてあとは外すという「ホーミースタイル」も嫌味なくサラッとキメる事が出来る。また、「排尿」によって他者と意思疎通を図るという特技を持っている。

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